疲れをとるクラシック音楽

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ハンバーグとカレーだけでは死ねない人のために――武満徹「弦楽のためのレクイエム」

どういう音楽が疲れを癒すのか考えてみるが、それは一律ではない。テンポの速いものもあれば遅いものもあり、音量のうるさいものもあれば、静かなものもある。響きの甘いものもあれば、苦いものもある――。おそらく、こんな3次元マトリクスで整理することはできるのではないか。

テンポが遅くて音量が静かで、響きが甘い音楽。あるいは逆に、テンポが速くて音量が大きくて、響きが苦い音楽。単なる好みの問題を超えて、我々が直面する疲れとの関係で、いずれの音楽も日々の疲れを癒す可能性がある。ただし、「音楽は音を楽しむと書く」とかいう人は、苦い響きの音楽がなぜ人を癒すのか、よく理解できないのかもしれない。

我々は日々思うようにならない世の中で、かろうじて生き延びている。そんな生活の苦さを癒すには、かえって苦い食べ物だとか、苦い音楽とかが救いになりうるのだ。40過ぎても巨人ファンだのロックが好きだの、大好物はハンバーグとカレーと言っているような人には、そもそも疲れも癒しも存在していないのではないか。

ハンバーグとカレーだけでは死ねない人は、レクイエムを聞くのがいいと思う。死んだ人を悼む気持ちが込められた音楽の悲しさが、他人を癒すこともあるだろう。レクイエムといえばブラームスだのヴェルディだのフォーレだのいろいろあるが、ここではカトリックの典礼文とは関係のない、ただの追悼音楽を。


TAKEMITSU - Requiem for Strings.