疲れをとるクラシック音楽

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フランシス・ベーコンの「叫び」の音響とは――ストラヴィンスキー「火の鳥」1910年全曲版

東京国立近代美術館の「フランシス・ベーコン展」を見てきた。日本では30年ぶりの個展ということで楽しみにしていたが、正直をいうと最もパワーのある作品は来ていなかったように思えた。

異端の作家でありながら生前から評価されていたためか、自己模倣があったのではないかと思ってしまった(なんて上から目線の生意気な感想だろう)。

とはいえ、やっぱりいいものもあって、個人的にいちばん痺れたのは、デヴュー作を含む初期の3~4作だ。誰の目も気にしないで書かれたものが、美術においては他者をいちばん揺り動かすものなのである。

公式にデヴュー作とされているもの
公式にデヴュー作とされているもの

そこが「顧客の要求・期待に応える」というマーケティング発想とは異なる。とはいえ、どんな作品にも彼らしい「叫び」が包含されていて、見終わってカタルシスがあった。

代表作の「教皇」シリーズでも分かるように、彼の画には抑圧されたストレスが満溢している。下々の者がストレスが溜まると愚痴を言っているが、トップにいるものがそこに登りつめるまでに味わった苦渋や、追いたてられる恐怖を感じながらその地位に居座る重圧に比べれば何のことはない。

左:ヴェラスケス、右:ベーコン
左:ヴェラスケス、右:ベーコン

そんなことを思わせるものがある。その意味で、フランシス・ベーコンは「疲れをとる」美術作品なのかもしれない。

また、これも本当に個人的な感想だが、ベーコンの迫力ある表現に触れた時、自分の頭のなかに再生される響きがあった。それにほぼ近いのが、ストラヴィンスキー火の鳥」の一節だ。


Full length - Strawinsky: Der Feuervogel / The ...

有名な1945年版の組曲にはないのだが、原曲となった1910年版の、有名な「カスチェイ一党の凶悪な踊り」の前の場面だ。ユサ・ペッカ・サラステが指揮するライブ動画でいうと、29分10秒から29分35秒くらいの間の音楽である。さらに細かく言えば、途中金管が都合4回ほど咆哮するところがあるが、あそこである。