疲れをとるクラシック音楽

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スカした現代人だって本当は達成感を得たい――エルガー「行進曲 威風堂々 第1番」

鉄板のバッハを紹介したはずなのに、どうも落ち着かない。やっぱり疲れたときには、別の神経を高ぶらせた方が、結局は疲れがとれるような気がする。癒しというと昔のウィンダムヒルみたいなのを想像する人が多いかもしれないが、自分にとっては、あれは癒しにはならない。

というか、癒しというのは、そういう弛んだものではないという考えだ。疲れにもいろいろあると思うが、現代日本のサラリーマンたちが直面する疲れとは、達成感のなさが原因になっているのだろう。

だからこそ、それを埋めるようにして、ゲームの達成感、克服感、成長感が求められ、若い人たちが癒されている。人間、特に日本人は、案外真面目にできているのである。

ここまで書いてきて何を選ぶか迷うのだが、以前書いたショスタコーヴィチの5番のように「勝利の行進」なのか「強制された歓喜」なのか分からないようなのはダメだとすると、もっと良心的な音楽がよかろう。

ということで、まさかのエルガー「威風堂々」なんてのはどうだろうか。まさに一点の曇りもない、威風堂々たる行進曲である。エルガーといえばイギリスの作曲家、「愛のあいさつ」という美しいメロディがあるが、あれを書いた作曲家がマーチを書くと、こうなるのである。

もっとも、単純なマーチではなく途中でテンポが変わるので、これで歩こうとしたってうまくいかない。そういえば不思議なのが、あのスカしたイギリス人が、この曲が大好きだということだ。ときにはみんなで声を合わせて歌ったりする。普段はやせ我慢しているが、彼らも達成感を得たいのだろう。

なお、原題は「Pomp and Circumstance」で、威風堂々というのはかなりの意訳。「華麗さと仰々しさ」では興醒めだが。


Elgar - Pomp and Circumstance March No. 1 (Land of Hope and Glory) (Last Night of the Proms 2012)